08:40:57 今は『バビロンに行きて歌え』を読んでる。20歳の中東の兵士が東京に密航するっていうストーリーで、ジェイソン・ボーンもかくやのアクションを六本木で繰り広げたりするというかなりフィクションよりによったストーリーで、池澤夏樹が豊穣のフィクションの世界の歩き方を会得したのかな、という感じ
08:43:05 で、乗りに乗っている時期の作品って感じで読んでてすごく楽しい。第一作の「夏の朝の~」は恐る恐るこれまで読んできた海外小説をなぞりながら最初の一歩を踏み出すみたいな感じで、「スティル・ライフ」はきっと若き頃の経験をベースに、「ヤー・チャイカ」は娘の子育てをもとに
08:45:47 「真昼の~」は彼の叔母さんをモチーフに描いていて、それほど大きな嘘はつかず、理系的な地球と宇宙に関する知識に載りながら、堅実なストーリーテリングだったんだけれど、今回の「バビロンに~」で物語世界が大きく広がって、自由奔放に物語世界を奔放に飛び回っているという自由な感じがする。
08:48:31 池澤夏樹は『小説を書くというのは、万引きと一緒で初犯が気が重いけど、だんだん気が引けなくなる』みたいなことを言っていたのだけれど、ほんとにそうで、段々、嘘を堂々とつけるようになっている感じがとても面白い。これが後の「マシアスギリの失脚」まで続いていくのかと思うと期待。
08:51:48 でも、やっぱり知識を持っているがゆえの世界の解像度の高さっていうのはすごくて、地理だったり火山だったりそういう知識が物語に練り込まれていて、だから、遠い過去↔現在↔未来というとんでもないスケールで世界を描くことができてる。
08:53:37 で、科学的な知識がありながら、一見すると非科学的な精霊だったりそういう超自然的な力をも描いていて、そこがすごい。「全ては科学的に記述することができる」みたいな科学過信ではないところの、彼の世界観ってすごいなって思う。
08:55:56 池澤夏樹が書くセックスシーンではしばしば「薄い膜で包まれた」っていう描写が出てくる。別にだからどうだってわけじゃないんだけど、そういう捉え方ってのも面白いな、って思っただけ。
09:11:43 池澤春菜が選ぶ池澤夏樹ベスト3は『いつだって読むのは目の前の一冊なのだ』と『池澤夏樹 個人編集文学全集』と『マシアスギリの失脚』で、小説はマシアスギリだけなので、その作品がすごく気になっている。(ほか2つは巨大で途方も無い仕事への称賛というか敬服って感じなのかな?)