06:46:12 昨日環境省のベストナッジ会議で米国加州州法695条のことを紹介したら思いのほか皆さん知らなかったので紹介します。電力危機を経験した加州では2000年代に環境や節電に優しい家庭向け時間帯別電気料金をデフォルト化しようとしたが反対があり2013年以降まで先送りする法律SB695を可決した。
06:52:11 UCバークレー校教授等がブレインを務めるだけあって非常に興味深い内容でSB695は①新旧料金のどちらがお得か情報提供するシャドービルを与えること。②新旧料金の安い料金を適用するビルプロテクション期間を設けること。③スイッチングコストを取らないこと。④低所得者保護を実施すること。
06:57:07 加州3大電力会社を中心に時間帯別電気料金のデフォルト化に向けてオプトイン型TOUからオプトアウト型TOUへの自主的移行計画を発表したが、最大の電力会社が山火事のあおりで経営破綻したり必ずしも移行は上手くいっていないとも伝えられ、私もまた最新情報を勉強しておかないといけない。
07:05:12 この事例からも分かるようにオプトインからオプトアウトへデフォルトを変えることは大きな社会的抵抗を受けて時間もかかること。セイラー教授の提案した確定拠出型年金への移行等、デフォルト化が成功した事例もあるがむしろ例外に属する。僕達はオプトインを伸ばすナッジの方を研究している。
07:17:46 私の取組むナッジ研究課題を2つ。①セイラー達のいうRECAP (Read, Evaluate, and Compare Alternative Prices)の開発。RECAPとは複雑怪奇な料金体系を整理してどちらがお得か教えてあげること。②一律型ではなく個々の個性に応じてきめ細かな最適なパーソナル・ナッジを提案してあげること。
07:24:15 最後に皆さん、ナッジに過度な期待をし過ぎ。少数の成功事例がもてはやされすぎだが一種の出版バイアスで実際にはそれほど長く大きく効くものではない。人間は頑固です。認知バイアスを補正して金銭・非金銭のインセンテイブが効果的となるような露払いが本来の勤め。ナッジは魔法の杖ではない。
07:31:29 私も年をとったものだが経済学の素晴らしさはホモエコノミクスのがっちりしたモデルを持つこと。だからこそ生身の人間行動の不思議の数々を、合理性を仮定したベンチマークモデルからの距離(バイアス)として体系的に検証できる。これがなければ行動経済学は面白おかしいハウツー集と変わらない。
07:55:34 JST CRESTの国際シンポで人に会うなり「あなたの研究分野で機械学習はどう使われているか」という質問を繰り返したが制御理論系の工学者が多いせいか噂には聞いているが(一部研究を始めているが)あまり使いこなしていないし役立つのかも分からないという正直な答えが多く好ましかった。
08:00:20 米国・インドの機械学習屋もおられ私が機械学習を使い始めた経済学者だと知ると積極的に共同研究の依頼も来るのでこちらの熱意もたいしたものだ。理工系の学会の招待講演依頼も多く、しばらくは「行動経済学・因果推論・機械学習」をテーマに講演しようと思う。僕の頭の中では3つは一つだ。
09:02:43 経済学者から見れば比較的載せやすい雑誌なのだがJSTの方々が喜んでくれてプレスリリースを用意することになった。経済学雑誌363誌中13位という高インパクトファクターはこういう時には役立った。こういうのが縁になってCREST やさきがけをどんどん社会科学者がとるようになれば良いなと思う。