00:06:02 「一度でいいから」とミズエは思いました。 「ほんものの、あたし自身に会ってみたいわ」
02:06:03 たぶん、寺山さんは、いつまでも終わらない歌を、それとは裏はらにきっちりと短い「もう一つの歌」に押し込めようと、いつも努力してきたのだ。 ついでにいえば、メルヘンやファンタジーの形式は、そんな寺山さんの試みにちょうど釣合った媒体の一つだったといえるのだ。 - 荒俣 宏 -
04:06:10 ”生きる”という表現は一つだが、”死ぬ”となると少なくない。”しぬ” ”いく” ”往生” ”命とり” ”果つる” ”絶える”……といった具合に、である。二人で死に、十人で死に、社会全体で死ぬ、という発想は、やがて死ぬを、〈負の現実〉として〈正の現実〉と相対させることになるだろう。
06:06:03 みんなのまえで 小鳥の言葉が嘘になるとき 僕の内ではげしく窓が閉じる 僕すこしうつむいて 耐えるように暗い僕の内の 階段を下りて帰ってゆく しかし 火山がすてきに晴れていたりするので 桜の咲く校庭で 僕は手を平らに 胸にあててみたりしたのでした
08:06:23 電話より愛せめる声はげしきとき卓の金魚はしずかに退(さが)る
10:06:24 なぜ、月はあんなに遠いのだろう。 なぜ、モミはやって来たのだろう。 なぜ、ぼくは幸福について考えたりするのだろう。 なぜ、こんな内緒話を打ち明けてしまったのだろう。 ああ、なぜ、詩なんか書くのだろう。
12:06:20 行きあたりばったりで跳べ
14:06:24 胸にひらく海の花火を見てかえりひとりの鍵を音立てて挿(さ)す
16:06:23 夢なのだ。さあ、空を見上げろ! 風見の赤い雄鶏がまわってるあいだは、夢なのだ。 だが、夢でない現実などあるものか! 現実でない夢があるものか!
18:06:21 水浴している月に ギターが話しかけている 恋していないのはだれかね? すると月が答える 恋していないのは オレンジの実と 風ばかり
20:06:23 地球儀の陽のあたらざる裏がはにわれ在り一人青ざめながら
22:06:25 わが撃ちし鵙に心は奪はれて背後の空を見失ひしか