00:23:21 二十八歳のその処女(むすめ)は、 歩道に沿つて立つてゐた、 雨あがりの午後、ポプラのやうに。 - 米子
01:23:17 カドリール ゆらゆるスカーツ 何時の日か絶えんとはする カドリール! - 春の思ひ出
02:23:23 連れだつ 友の お道化(どけ)た 調子も 不思議に 空気に 溶け 込んで 秋は 案じる くちびる 結んで - 秋の日
03:23:15 眠つてゐるのは、菜の花畑に 菜の花畑に、眠つてゐるのは 菜の花畑で風に吹かれて 眠つてゐるのは赤ン坊だ? - 雲雀
04:23:24 あゝ、『あの時』はあゝして過ぎつゝあつた! 碧(あを)い、噴き出す蒸気のやうに。 - 青い瞳 1夏の朝
06:23:20 かくは悲しく生きん世に、なが心 かたくなにしてあらしめな。 - 無題
07:23:18 あゝ、誰か来て僕を助けて呉れ ヂオゲネスの頃には小鳥くらゐ啼いたらうが けふびは雀も啼いてはをらぬ - 秋日狂乱
08:23:31 空に昇つて、光つて、消えて―― やあ、今日は、御機嫌いかが。 久しぶりだね、その後どうです。 - 春日狂想 2
09:23:22 朝鮮女(をんな)の服の紐 秋の風にや縒(よ)れたらん - 朝鮮女
10:23:33 とにかく朝霧罩(こ)めた飛行場から 機影はもう永遠に消え去つてゐた。 - 青い瞳 2冬の朝
11:23:25 ではみなさん、 喜び過ぎず悲しみ過ぎず、 テムポ正しく、握手をしませう。 - 春日狂想 3
12:23:28 月は聴き耳立てるでせう、 すこしは降りても来るでせう、 われら接唇(くちづけ)する時に 月は頭上にあるでせう。 - 湖上
13:23:24 ――彼は独身者(どくしんもの)であつた 彼は極度の近眼であつた 彼はよそゆきを普段に着てゐた - 独身者
14:23:31 あゝ おまへはなにをして来たのだと…… 吹き来る風が私に云ふ - 帰郷
15:23:21 秋の夜は、はるかの彼方(かなた)に、 小石ばかりの、河原があつて、 それに陽は、さらさらと さらさらと射してゐるのでありました。 - 一つのメルヘン